
11月10日を「1110」として、「1」を電柱に見立て、それが「0」(ゼロ)になることを願って定められた。電柱が無くなることで景観が良くなり観光の振興に役立ち、巨大地震などに対する防災機能が高まることを広く世の中に知らせることが目的。「無電柱化民間プロジェクト」が制定。
以前、台湾旅行をしたときに印象に残っていることがあります。
それが
電柱がない
ということ。
台北、台南、高雄と3都市行きましたが、本当に電柱をほとんど見ていない気がします。
それもそのはず、台北中心地は無電柱化率が95%を超えているそうです。
日本で暮らしていると、電柱がある空が当たり前です。
我々のような保安業務をしていると、PASという架空電線の入り切り操作も日常的です。
しかし、海外の主要都市では地中化が当たり前なのです。
海外の日本の無電柱化事情を見ていきたいと思います。

1.海外の無電柱化状況
無電柱化は、都市の景観を美しく保つだけでなく、災害時の安全性向上にも貢献します。
世界の先進国では、無電柱化が進んでおり、特に都市部では無電柱化率100%が当たり前になりつつあります。
そんな中、東京23区はわずか8%と、ダントツで無電柱化が進んでいません。(2017年時点)
なぜ海外では無電柱化が進んでいるのでしょうか?
ここからは、代表的な都市について説明します。

(1)イギリス
ロンドンでは無電柱化率は100%と進んでいます。
その理由としては景観維持のためとする意見もありますが
どうやら歴史的な背景も関係しているようです
イギリスでは街灯が普及したころ、ガスと電気の二種類の街灯が存在していました
ガス管は当然地中を通しますが、電気は地中と架空の二通り選べます
これは不公平だということになり
なんと1882年に法律によって電線を地上もしくは上空に設置することを禁止したのです
強制的に地中化していったわけです

(2)フランス
世界的な観光都市であるパリでも無電柱化率は100%です
パリの人は景観をとても大事にしており、1913年に歴史的建造物の保存が制度化されます
その後も景観保全の法整備が進み、1962年には「フランスの歴史的・美的文化遺産の保護に関する法を補完し、かつ建築物修復の促進を目指した法律(通称マルロー法)」が成立し、地区ごとに景観保全計画の策定が可能となりました
このような流れもあって、自治体は配電事業者との契約により地中化を規定しています
(3)アメリカ
アメリカでは、特にカリフォルニア州やニューヨーク市など、災害に強い都市を作るために地中化が進められています。
まず、1884年にマンハッタンにおける電線類の地中化条例が制定されます
その後の1888年のブリザード被害を契機に地中化は一気に進展し、1970年には無電柱化が72%になります
そして、2012年のハリケーン被害等を受け、郊外部でも電力会社が無電柱化を推進し、2016年時点で83%まで進みます
ワシントンD.Cでも無電柱化率は65%に上ります
(4)アジア諸国
アジア諸国でも法整備が進み、無電柱化率の高い国が多いです
特にシンガポールでは、建国50周年の節目に今後City in a Garden(庭園の中に街がある)を目指す、として緑化政策を進めました
美しい街並みを作るために電線の地中化が進められていった結果、無電柱化率は100%となりました
私の訪れた台湾では無電柱化率が42%、台北に限ると96%と、こちらもほぼ100%を達成しています
この背景には、まず台湾政府が1991 年、国民所得の向上、産業の育成、地域発展のバランス、生活の質の向上という 4 大政策を打ち立てた「六年国建計画」を発表し、その後、1992年には台北市が「市區道路電線電纜地下化建設規範」を交付したことが影響しています
これらの国々では、景観に対する意識であったり、災害への備えという観点から、国や自治体が法整備を進めたことによって、高い無電柱化率を達成しているのです
2.日本と海外の違い
日本は、他国と比べて無電柱化の進展が遅れているのが現状です。
その理由として、次のいくつかの要因が挙げられます。
(1)工法の違い
日本ではコストのかかる電線共同溝方式を採用しています
電線共同溝方式とは、電力ケーブル・通信ケーブルをまとめて管路に収容して埋める方式です
これは複数社と調整して進めるため時間もコストもかかるのです
一方、海外では直接埋設方式や、施行性のよい配管を使用した管路方式を採用しているため時間もコストも比較的少なく済みます
経産省が海外電線類地中化の調査結果を公表しています
各国のkmあたりの工事コストですが
高圧1回線の 1km あたりの地中化コストは、日本の約 3,200 万円に対して
パリ市では約 2,600 万円、ジャカルタ特別州では約 1,050 万円としています
単純な比較はできないものの、日本の無電柱化コストは海外に比べて割高であると考えられます
*出典:国立研究開発法人 寒地土木研究所資料「無電柱化の現状と課題」
これには日本の場合、掘削したあとは毎日埋め戻しが必要であるなど規制が多いことが影響しているようです
規制の多い日本では、電力需要の増加に合わせてメンテナンスのしやすい電線共同溝方式が採用されているのです
(2)費用と負担構造
海外では多くの都市で、管路・特殊部の整備は電力会社・通信会社が担っています
自治体の計画として実施する際も、ロンドンやパリでは自治体からの補助はなく
ワシントンDCや台北でも自治体の補助は25%~50%に留まります
一方、日本では、無電柱化にかかる費用が主に自治体や国の負担となる場合が多く、そのために予算確保が困難になることがあります
(3)歴史的背景
先に見たように海外諸国では早いうちから法整備が進んでいました
一方の日本では、戦後復興を急ぐあまりに低価格、修理の容易さから架空配線による整備を進めてしまいました
また国民から架空配線への反対の声も多くは上がらなかったようです
電柱への規制は、2015年に国が示した、緊急輸送道路での電柱の新設を原則禁止する、という発表まで待たなければなりません
これらの要因により、日本の無電柱化は、他国に比べて難易度が高いといえます。
しかし、近年ではこれらの課題に対処するための技術や政策も進んでおり、改善の兆しが見えています。
3.現状の取り組み
日本では、無電柱化に関する法改正が進んでおり、政府と自治体の取り組みが強化されています。
(1)無電柱化推進法と推進計画
2016年に「無電柱化の推進に関する法律」が施行され、日本全体で無電柱化を推進するための法的基盤が整いました
その後、2021年には「無電柱化推進計画」が策定され、特に都市部や観光地、重要な防災拠点を中心に無電柱化を進める方針が示されました
この計画により、地中化を進める優先地域が設定され、地方自治体や民間事業者と連携して無電柱化を推進しています
(2)低コスト化の取り組み
近年、日本では無電柱化のコスト削減を目指した新しい工法が開発されています。
国土交通省の「無電柱化のコスト縮減の手引き(令和6年3月)」の中には以下のような記述が見られます。
| 浅層埋設方式 | 通常より浅い位置(約50〜70cm)にケーブルを設置し、掘削量と工期を削減 |
| 直接埋設方式 | 管路を省略して施工コストを低減。ただし交換時の再掘削が必要 |
| 小型ボックス方式 | 従来の大型地上機器よりもコンパクト化し、設置コスト・景観影響を低減 |
| 多条共同溝 | 電力・通信会社が共用で使う構造にすることで、重複投資を回避 |
他にも埋め戻しを必要としない常設帯の設置や、管路に使用する材料を低コストなものに変更するなど、様々な提言がされています。
より詳しい内容は以下、国土交通省のページに説明があります。
(3)民間開発との連携
新しい開発プロジェクトにおいて、無電柱化を前提にした整備が進められています。
特に新築マンションや大規模商業施設など、民間開発の段階で地中化が進められることが増えています。
4.まとめ
日本に住んでいると電柱があるのは当たり前で、全く疑問に思っていませんでした。
海外、それもアジアの国々でも無電柱化が進んでいるという事実には衝撃でした。
調べてみると日本人の景観に対する意識であったり、戦後復興の際の政策であったりと仕方のない部分はあると思います。
そして、今では国や事業者も無電柱化に対する意識が変わっていることもわかりました。
景観の観点以外にも、災害への備えやバリアフリーの観点でも重要な無電柱化。
今後の動きにも注目したいと思いました。
日本は世界的にも無電柱化が遅れている
無電柱化を進めるためには法規制や国民の意識、コストの高さなど様々な問題がある
近年、国が主導で無電柱化を進める動きがある

