
10月21日はあかりの日です。
1879年10月21日、トーマス・エジソンが世界で初めて白熱電球の実用化に成功したことを記念して制定されました。
私は以前「照明コンサルタント」という肩書きで仕事をしていました。
民間の資格で、取得するのは難しくありません。
名ばかりの「コンサルタント」だった私が危機感を持った日のお話です。
1.お客様に育ててもらう?
学生が就職活動をする際に、よく先輩社員のインタビュー記事で目にする
「お客様に育ててもらいました」
というフレーズがあります。
就活生だった当時はあまりイメージできませんでした。
いざ社会に出ると、会社の先輩は忙しそうで質問できず
さらに中小企業だったので、充実した研修制度なんてありません。
先輩から
「とりあえずこのエリアを、行くところなくなるまで飛び込んできてー」
なんて言われて、大した知識もなくひたすら飛び込み営業で断られる毎日…
「必要ないから」
「担当は不在です」
「見てわかんない?仕事中だから(怒)」
などなど。
しかし、たまに私のことを思って話をしてくれる人もいて、ためになることもありました。
例えば、飛び込みで幸運にも担当者へつないでもらったとき、言われたひとこと
「うちの会社のこと調べてから来た?調べてないよなー」
これ以降、ホームページの内容くらいは頭に入れるようにしました。
2.照明のプロなのに知らないの?
ここからは、以前から付き合いがあり、可愛がってもらっていたお客様とのエピソードです。
当時、「照明コンサルタント」なんてカッコつけた肩書きを名刺に入れていた私。
現実は、数字に追われ、お客様に寄り添った提案などできず、パターン化した商品選定で済ましていました。
そして、マンションやビルなどの照明を扱うことが多く、店舗のオシャレな照明についても無知でした。
ある日、昔から取り引きのあるカフェのオーナーと話をしていました。
新店舗を出したいが、照明についてはこだわっているので、相談したいということでした。
私がなかなか良い案を出せない中でオーナーは言います。
「この前、プロフェッショナル*を観てたら、東海林弘康さんが出てたよ。知ってる?照明デザイナーの。」
*NHKのドキュメンタリー番組
知らないと私が伝えると
「有名な人だよ?本当に照明のプロなの?少なくてもおれよりは詳しくないとさー」
ショックでした。
当時の私は、入社して数年経過し、自信が付いてきたころでした。
その後、内装屋さんを交えての打ち合わせをしたのですが
ここでは、私の知らない海外の照明メーカーの話題が出てきます。
私は照明コンサルタントという肩書があるにも関わらず、内装屋さんのほうが照明に詳しかったのです。
3.東海林弘康さんの著書を読んで
このあとすぐ、東海林弘康さんの出たプロフェッショナルを観ました。
さらに東海林弘康さんの本も読みました。
海外のオシャレな照明が紹介されてる雑誌も読みました。
この程度で詳しくなったわけはないのですが
これまで触れてきた照明は、照明の中のごく一部なのだと痛感しました。
東海林弘康さんの著書、「日本の照明はまぶしすぎる」を読んで照明の価値を考え直しました。
満月の明るさは0.2ルクスだそうです。
事務所の机の上は300ルクス以上、非常灯の下の床面は1ルクス以上など、環境の明るさには決まりがあります。
その中で、0.2ルクスというのはかなり低い数値に思えます。
東海林さんは、教科書で読んだこの明るさを体験するために、単身サハラ砂漠へと向かいました。
そこで観た景色は、明るく、とても美しかったそうです。
東海林さんは本の中で「美暗」という造語を使っています。
美しい暗がり。
照明は光だけでなく闇があってこそ生きるので、この光と闇のバランスが大切と言っています。
それまでのように、パターン化した提案ではだめだと思いました。
照明はその場所にあったものを提案しないと、せっかくの機会が無駄になってしまうと。
4.プロとしての提案をしたい
例えば、お客様から「家のエアコンが壊れた」という相談があれば
エアコンの状態を確認し、どうしても治らなければ、エアコンを新しいものに交換します。
しかし、こういった提案は誰でもできます。
エアコンも後継品があるはずなので、それを選べばいいだけ。
それではダメで、例えば
「これまで使用していて気になったことはありますか?」
などヒアリングをします。
「ハウスダストが気になる」と言われれば、お掃除機能の付いたものを選ぶ、とか
「昔と部屋のレイアウトが変わっている」と聞けば、もっと能力の低いエアコンを選んであげる、とか
「電気代が高い」と聞けば、電気代を節約できる使い方を教えてあげる、とか
その場、その人に合った提案が必要なのです。
「やっぱりプロは違うな」と思われるような提案ができないとダメだと思います。
私は電気の保守をする「プロ」です。
電気について良い提案ができるように努力していきたいと思います。
あかりの日を前に思い出した、お客様に教えられたことのひとつです。
東海林弘康さんのサハラ砂漠のエピソードが紹介されていました。
あかりの日についてはこちらに説明があります。

