先日、Xでフォローしている技術者さんのリポストで知ったのですが
どうやら受変電設備の更新計画が義務化される動きがあるようです。
まだ制定されてはないようですが、パブリックコメントに上がっていました。
1.どんな内容なのか?
対象になっているのは
「主任技術者制度の解釈及び運用」
これは電気事業法施行規則の「電気主任技術者制度」の部分を補完する内規です。
(内規:組織内のルールで法的拘束力はない)
その中の、絶縁監視装置を取り付けて隔月点検にしているケースが対象になっています。
個人や保安法人と業務委託契約を交わす際に契約書を作成するのですが、
その契約書に盛り込む内容として、以下の3点を追加するということです。
- 年次点検における点検項目として設備更新計画の履行状況確認を求める
- 電気管理技術者等が負荷の記録を1年間保存し、かつ過負荷が継続する場合にその原因を調査し、及び必要な対策を講じることを求める
- 設置者が設備更新計画に基づいて主遮断装置等を更新することを求める
2の負荷の記録というのは、過負荷警報を発していた場合のようなので、あまり気にしなくてよいかもしれません。
しかし、問題は1と3です。
簡単いうと
「開閉器や遮断器の更新計画を立てましょう。そして主任技術者は、それが守られてるか確認しましょう。」
といった感じでしょうか。
2.どんな機器が対象になるのか?
改正案には更新の対象機器について、こう書いてあります。
主遮断装置並びに保安上の責任分界点から主遮断装置までの間に施設する開閉器、遮断器及び配線(以下「主遮断装置等」という。)が⑧の計画に従って更新されていること(告示第4条第8号ハに規定する需要設備の年次点検を行う場合に限る。)。
⑧というのは今回追加される「計画通りに更新する」という条文のことです。
ちなみに、ここでいう「告示第4条第8号ハに規定する需要設備」というのは、絶縁監視装置を取り付けて隔月点検が認められる設備のことです。
※告示=電気事業法施行規則第五十二条の二第一号ロの要件等に関する告示
この内容から考えられる機器は
- PAS、UGS
- 高圧ケーブル
- VCB
- LBS(主開閉器の場合)
といったところでしょうか。
また、これを主任技術者の指示に従って更新すること、とされています。
3.どんな問題が考えられるか?
対象になる機器の価格を調べてみました。
※価格は代表的な型式の定価です。市場価格とは異なります。
機器名称 | 定価 |
PAS (VT・LA内蔵) | 約140万円 |
UGS (VT・LA内蔵) | 約245万円 |
VCB | 約45万円 |
LBS | 約10万円 |
現状、20年以上使用している方が、今回の改正で更新が必要になれば、その分のコスト増は避けられません。
また、これらの更新は年次点検時に行うとしても、作業にかかる時間だけ停電時間が伸びる可能性があります。
4.計画的な更新は悪いことではない
お客様にとっては負担につながるかもしれませんが、
これは私たち技術者にとっては悪いことでもなさそうです。
年次点検のあと、不具合や気づいた点があればお客様に報告します。
その中で、「耐用年数を経過しているため、計画的な更新が必要です」と指摘することは結構多いです。
もちろん、今すぐにダメになるというわけではないので、それほど強く言うことはありません。
ただ、事故が起きてからは遅いのです。
更新する計画を立てることと、それを明文化することは大切なことだと思います。
主任技術者は誠実にアドバイスをして、お客様はそれを参考に更新計画を立てる。
これは信頼あってのやり取りだと思います。
お客様から
「交換したほうがいいって言うけど、まだ使えるのに売りたいだけなんじゃないか?」
と思われたり、
逆に、
「まだ大丈夫って言うけど、交換するのが面倒なだけなんじゃないか?」
と思われたりするようであれば、全然信用されていませんね。
主任技術者は、お客様にしっかり納得して更新計画を立ててもらわなければなりません。
私もお客様から信頼される技術者になれるように、日々研鑽に努めたいと思います。